たったひとつの恋をください




「ーー塩屋さんっ!?」


呼ばれて、はっとした。


「えっ、何?」


「あのそれ、泡立てすぎだと思うんだけど……?」


指された私の手元のボウルを見てはっとする。ボウルの中には、びっくりするくらい泡立ってしまったパンケーキの生地が。


「ご、ごめん!ちょっと考え事してて」


「あはは。全然オーケーだよ。むしろふわっふわのパンケーキになりそうでいいんじゃない?」


そう笑ってもらえて、ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間。


「ね、塩屋さんは、好きな人とかいないの?」


不意打ちの質問に、ギクッとする。


「う、うん。いないよ」


「そうなんだ。でも、太一と付き合ってるんじゃないかってみんな言ってるよ?」


「あはは。完全に誤解だよ、それ」


やっぱり、勘違いしてる人は多いんだ。


確かに男の子の中で一番喋りやすいっていうのはあるけど、全然そんな感じじゃないのにな。



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