たったひとつの恋をください
「琴里……っ!?どうしたの?」
私は前にいた女子の背中を押しのけて駆け寄った。
「はあ……はあ……っ」
手をついて、荒い呼吸を繰り返す琴里。
床は落ちた小麦粉で、一面白く染まっている。
「ね、ねえ、大丈夫?」
琴里は答えない。大丈夫なわけない。だってこんなに苦しそう。だけど私には、そう声をかけるだけで精一杯だった。
すぐに藤本先生が駆け込んで来て、誰か付き添いをと言うので、私は迷わず手を挙げた。
琴里は、震えていた。顔も手足も青白くて、まるで何かに怯えるみたいに。
なんでーーさっきまであんなに元気だったのに。
「羽川、立てるか?立てないよな。よし、わかった」
藤本先生は一人で確認すると、琴里の小柄な身体を軽々持ち上げると、私を見て言った。
「とりあえず、保健室だ」