たったひとつの恋をください
私はゆっくりと立ち上がって、黒板の前に立った。
チョークの匂い、黒板消しの跡。白いチョークを手に取って、すうっと短く息を吸う。
今、ここには、私しかいない。
誰も見てない。
だからひっそりと、私は願う。
『蓮と両想いになりたい。』
黒板の隅に小さく書いた、嘘のない、本当の気持ち。
本当は、そうだった。それが私の願いだった。
本当の本当に叶えたかったのは、たったひとつの恋だった。
だけど君は友達の彼氏。
叶うはずなんてないって、わかってるけどーー。
そのとき、鐘が鳴った。はっとして、私は慌ててチョークを置いた。