たったひとつの恋をください
第九章 「隠した気持ち」
『何してたの?』
そう言われて、答えられるはずなんてなかった。
だってーー
たった今、私は最低なことを願った。
心で思っただけじゃなく、形にして。
黒板の隅にかすかに残るチョークの跡は、私の気持ちそのもの。
消したくても消せないほど、強い想い。
……見られて、ないよね?
だって、あのとき。鐘がが鳴ったとき。
確かにそこには、誰もいなかった。私だけだった。
「あの……人を、待ってて。ちょっと、暇だったから」
しどろもどろに口から出た言葉は、自分でもかなり無理があったと思う。
待ってる人なんていないし、暇だったから黒板にラクガキしてたとか、かなりバカっぽい。
でも、今の私にはそれが限界だった。