たったひとつの恋をください
「さすがに外で食うのも寒くなってきたよな」
お弁当を食べながら、蓮が冷たい風に肩を震わせる。
「もう十一月も半ばだもんねえ」
文化祭が終わると、待っていたかのように、空気が一気に冷たくなった。
びゅうっと冬を思わせる木枯らしが吹いて、校庭の木々も赤や黄色に色づきはじめている。
頬に、はらりと穴の空いたオレンジ色の落ち葉が落ちてきた。
「わあ。綺麗な色」
何気なく言った言葉だったけれど、三人が、なぜかギョッとしたように私を見ている。
「……え、私、なんか変なこと言った?」
うん言った、と三人同時に大きく頷いた。
「葉っぱを見て綺麗とか、七瀬がいきなりそんな情緒的なこと言い出すとちょっと心配になるな」
「そうだよー。ナナちゃん、大丈夫?」
「だっ、大丈夫だよっ!」
まったく失礼な、と思いつつ、自分でもそう思ってしまうのがちょっと哀しい。
普通にしようとすればするほど、普通じゃなくなってしまう。
やっぱり太一ってすごいな。なんでこんなに普通にできるんだろう。