たったひとつの恋をください
「あーあ。新発売のコロッケパン、めちゃウマいからオススメだったんだけどなー。ま、人気だしそりゃもうないか」
階段に座って、太一は定番のたまごパンにかぶりつきながら残念そうに言う。
「これはこれで安定のウマさでいいんだけど」
私は隣で、このパターン、なんかデジャヴだなあ、なんて思っていた。
こういうことは前にもあったから、よく知っている。
一度目はお祭りのときで、二度目は保健室で。
どっちも私の様子がおかしいのに太一は真っ先に気づいて、そこから手を引いて連れ出してくれた。
そして、今日も。
「……私、やっぱり変だった?」
パンを食べるのをやめて、ぽつりとつぶやいた。
「うん、めちゃくちゃ変だった」
と、即答。
「変なところで笑い出したり、かと思えば急に泣きそうだったり。見ててちょっと心配になるくらい」
「そ、そんなにがっつり情緒不安定だったんだ……」
変だろうなって自覚はあったけれど、そこまでとは。