たったひとつの恋をください
「ごめんね、なんか私……」
「ごめんとか、ナシね」
太一が私の言葉を遮って言う。
「俺別に、悩ませたくて言ったわけじゃないから。……にしても、あの分からず屋もいい加減はっきしろって話だけど」
「えっ?」
「ううん、こっちの話」
太一はにっと笑って、それからパンにかぶりついた。
分からず屋って、なんのことだろう?
気になったことは、なんとなく訊けないままだったけれど。
「とにかく、ナナちゃんは不器用なんだから。無理して普通にしようとしないで、いつも通りにしてればいいんだって」
「む、難しいこと言うね……」
私は苦笑しながら、だけど少しだけ、気分が軽くなった気がした。