たったひとつの恋をください
予鈴が鳴って、授業が始まる直前に席についた。
いきなり抜け出したりしてちょっと気まずかったから、わざと遅めに戻ってきたんだけど。
「七瀬」
隣からの声に、ドキッとする。
「なに?」
「さっき、太一と何話してたの?」
「えっ?」
ドキッとした。正直になんて、言えるはずないし、それに……
「べ、別に普通のことだよ。蓮には関係ないでしょ」
ああ、もう。なんでこんな可愛げのないことしか言えないかなあ。
思わず自分の頭をごつっと殴りたくなった。
「……そうだけど。あ、英語の予習やってある?」
「う、うん」
鞄から英語のノートを取り出すと、ひょいっと断りもなく奪われる。