たったひとつの恋をください
「サンキュー」
「ちょっと、まだ貸すとは言ってないけど」
「じゃあ、貸して?」
「……いいけど」
ため息をつきながら、私は黒板に視線を向ける。
だけど授業が始まるまでにはまだ少し時間があって、つい余計なことを考えてしまう。
なんでさっき、あんなこと訊いたのかな。
私と太一が何を話してたかなんて、蓮には関係ないはずなのに。
なんて……
そんな、ちょっとしたやりとりですら、君の一挙一動が気になってしまって。
気づいたらやっぱり頭の中は君のことでいっぱいで。
失恋したら、恋は終わるものなんだって思ってたけれどーー、
全然、そんなことなかった。
前よりも、今のほうが。昨日よりも、今日のほうが。
もっと君のことが好きなんだって、思い知らされるだけだった。