たったひとつの恋をください




「ナナちゃんっ!」


HRが終わって帰る準備をしていると、琴里がぴょんっと跳ねるようにやって来た。


テストが終わったばかりで、わかりやすく上機嫌だ。


「今日、お買い物行かない?この前いいお店見つけちゃって」


「あー……ごめんね。今日は用事あるんだよね」


「そうなんだ。蓮も部活だし、ひとりで行ってこようかなあ……」


露骨に落ち込む琴里に、私は笑って返す。


「じゃ、また今度行こうよ」


「うん、行こ行こー」


テスト期間から開放されて、私も遊びに行きたかったけど。


今日は珍しく、学校帰りにお母さんと約束をしていた。


たまにはご飯でも行こうか、お母さんがそう言ってきたのは、三日前のこと。


平日に外食なんて珍しいなと思いつつ、でもそのときは、特に深くは考えなかった。




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