たったひとつの恋をください
「七瀬ー」
待ち合わせ場所に行くと、すでにスーツ姿のお母さんが待っていて、こっちこっちと手を振っていた。
聞けば近くでお店を予約してあるらしい。
「わざわざ予約なんてしたの?なんで?」
「そこね、前から気になってたところなの。予約もなかなか取れないのよ」
「ふうん」
それを聞いても、やっぱり珍しいなって思った。
いつも行き当たりばったりなお母さんが、お店を予約するなんて滅多にないことだから。
お店は、そこから歩いて五分くらいだった。
「え、ここ……?」
店の前まで来て、私はギョッと目を丸くした。
赤々とした豪華な門構え。金色で縁取られた看板に、中が見えづらい造り。
明らかに制服で来るのは間違っているような、いかにも高級そうな店構えの中華料理屋だったから。