たったひとつの恋をください
いったいなんなんだろうと、首を傾げていたら。
「あっ、来た来た」
とお母さんが顔を上げたのと同時に、店員さんに案内されて、スーツの男の人がやって来た。
「すまないね。遅れちゃって」
男の人は申し訳なさそうに少し頭を下げる。
「ううん、私たちもちょうど今来たところなの」
親しげに笑みを浮かべるお母さんと男の人を、私はまじまじと見つめる。
え、ちょっと待ってーーこの人、誰?