たったひとつの恋をください




だって、電撃にもほどがある。数年ぶりの再会で結婚決めちゃうとか、ドラマや映画じゃないんだし。


お母さんのぶっ飛んだ性格には慣れてるけど、植村さんだってたぶん、ちょっと変な人だ。


だけど初対面の人にそんなことはもちろん言えるはずなくて。


文句は後で全部お母さんにぶつけることにして、なんとか堪えた。


「私たちもびっくりなんだけどね、まさかこんなことになるなんて」


「ああ、本当に。出張に来た甲斐があったよ」


二人は楽しそうに、私なんてそっちのけで語り合っている。


そんな和やかなムードの中。私はだんだん、腹が立ってきた。


……ちょっと、待ってよ。なにのんきに笑ってんの?


もっと、話し合うことが山ほどあるんじゃないの?




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