たったひとつの恋をください




「……住むところは、どうするの」


ようやく絞り出した声で、私は言った。


また、引っ越すの?つい半年前に、この街に来たばかりなのに。やっと慣れてきて、友達もで来て、好きな人もできて、それなのに。


ーーまさか。


「まさか、東京に行くとか、言わないよね……?」


違うって言ってほしかった。遠くへは行かない。ずっとここにいるって。



「うん。ゆくゆくは、そうしようと思ってるのよ」



お母さんは、はっきりとそう言った。最初から用意していたみたいに、少しの迷いもなく。



< 250 / 377 >

この作品をシェア

pagetop