たったひとつの恋をください
「……住むところは、どうするの」
ようやく絞り出した声で、私は言った。
また、引っ越すの?つい半年前に、この街に来たばかりなのに。やっと慣れてきて、友達もで来て、好きな人もできて、それなのに。
ーーまさか。
「まさか、東京に行くとか、言わないよね……?」
違うって言ってほしかった。遠くへは行かない。ずっとここにいるって。
「うん。ゆくゆくは、そうしようと思ってるのよ」
お母さんは、はっきりとそう言った。最初から用意していたみたいに、少しの迷いもなく。