たったひとつの恋をください
「不安なら俺もついてこうか?」
ぽん、と蓮の手のひらが頭の上に乗って、わしわしと指先だけで撫でられた。
また、子どもをあやすみたいに。
ムッとするけど、今は文句を言う代わりに、首をふるふると横に振る。
「ううん。大丈夫」
これは、私の問題だから。もう、向き合うことを怖がったりしないから。
「行ってくるね。ちゃんと、話してくる。私の気持ち」
「ああ」
短い返事だったけれど、とんと前に押された背中が、頑張れって言われたような気がした。