たったひとつの恋をください
来るときとは全然違う気持ちで、家までの道を走った。
星の見えない空の下、道を照らすのはポツポツと立つ街頭と民家の灯りだけで、でも今は、怖いとか不安だとは、もう思わなかった。
それはきっと、何度も通って慣れた道だからってだけじゃない。
『いいよ、ここにいて。好きなだけいていいんだ』
君がくれた言葉が、私の中で、ゆっくりと熱を帯びていく。止まりそうになる足を前へと進めさせてくれる。
何を話せばいいんだろう。これからどうなるんだろう。どんな顔で帰ったらいいんだろう。
謝ったほうがいいのかな。私のせいで台なしにしちゃってごめんねって。お母さんはなんて言うかな。
たくさん考えた。だけど結局、頭の中は全然まとまらないまま、ここまで来てしまった。