たったひとつの恋をください
「心配したのよ。もう帰ってこないんじゃないかって……」
「そんなわけないじゃん。帰ってくるよ。ここが私の家なんだから」
「そうよね。おかえり、七瀬」
お母さんの肩が、小さく震えていた。こんなお母さん、初めて見た。
強くて、いつだって迷いがなくて。不安になることなんてないんだって、思ってた。
バカだな、そんなはずないのに。
ちゃんと見ていなかったのは、私だって同じだった。
「うん。ただいま」
私もまた泣きそうになりながら、そう答えた。