たったひとつの恋をください
テーブルを挟んで向かい合って、私たちはこれまで思っていたこと、ずっと心に溜めていた気持ちを、少しずつ話した。
「大事なこと、何も言ってなくてごめんね。どうやって言えばいいのか、わからなくて」
お母さんは辛そうに言った。
やっぱり、お母さんも悩んでいたんだ。
全然知らなかったし、知ろうともしなかった。
家族なのに。こんなに近くにいたのに。
話す時間なんて作ろうと思えばいくらでもあったはずなのに、自分からわざと遠ざけていた。