たったひとつの恋をください
「お父さんがいなくなったときにね、思ったの。七瀬には私しかいないんだから、私が守らなきゃって。嫌な思いを仕事をさせたくなくて頑張ってたけど、結局空回りしちゃってたんだね」
だから再婚を少し焦っていたのだと、お母さんは言った。
一緒に住めば、少しは生活に余裕ができる。仕事だって、今までみたいに遅くまでしなくてもよくなる。
そうすれば一緒に過ごす時間が増えるから。
「植村さんとはちゃんとお付き合いしたいと思ってるのよ。でも、やっぱりちょっと急ぎすぎてたみたい」
照れ臭そうに、そう付け足して笑うお母さんに、私もつられて笑った。
仕事ばっかりだったお母さんが、ちゃんと自分の道を歩んでいたこと。
それに私のこともちゃんと考えてくれていたんだって知ったら、なんだか嬉しくて。