たったひとつの恋をください




蓮の言った通りだった。話し合わなきゃわからないことが、たくさんあった。


こんなに簡単なことなら、怖がったりしないで、もっと早くにすればよかったな。


いつもは冷たくて淋しかった部屋が、今はこんなにも温かく思える。


不思議だな。気持ちひとつで、こんなにも景色って変わるんだ。


「ねえお母さん、私ね」


私はゆっくりと口を開く。


本当は、言うつもりじゃなかった。こんな、恥ずかしいこと。


でも、今なら言えると思ったんだ。



「私、好きな人ができたんだ」



付き合ってるわけじゃない。その人は、友達の彼氏だから。


そばで見ているのが辛いときもある。だけど、ずっと見ていたいとも思う。


私がこの街にいたいと思う、何よりも一番の理由。




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