たったひとつの恋をください



「なに?」


早く帰りたかったから、私はわざとぶっきらぼうに答えた。


「あなた、うちの……五組の転校生だよね?」


「え?あ、うん」


「やっぱり!見かけない子だから、もしかしたらそうかなって思ってたんだ。転校早々風邪なんて災難だったね。もう大丈夫?」


いきなりマシンガンみたいな勢いで喋り出した彼女に、私はたじろぎながら「うん」と頷く。


「そっかあー。よかったね!あっ、でも、夏休みにわざわざ出てくるのは嫌だよねぇ」


ころころ表情が変わる子だなあ、と思った。


楽しそうに笑ったり、かと思えば心配そうにしたり。そのどの仕草も、見惚れてしまうほど可愛らしくて。


こういう子はきっと、どこに行ったって、誰とでも仲良くできちゃうんだろうなって思う。


私とは正反対のタイプだ。



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