たったひとつの恋をください





こんなところでゴロゴロしてる場合じゃない。


着替えなきゃ。準備しなきゃ。どうしよう、何着て行こう。


あまり整理されてるとは言えないクローゼットをガサゴソと探る。



……あった。ずっと着ようと思ってて、まだ一度も着ていないワンピース。



ハンガーにかけられた花柄のワンピースは、なんとなく普段着にするのがもったいなくて、だけど着るような機会も見つからないないまま、ビニールすら外していない状態だった。


普段花柄なんて普段着ないから、少し恥ずかしい気もするけれど、迷っている暇なんてなかった。


さっきまで布団から出るのすら億劫だったのに。


今は寒さなんて、とっくにどこかに吹き飛んでいた。


突然舞い込んできた午後の予定に、単純だなって自分で笑っちゃうくらい、心が弾んでいた。



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