たったひとつの恋をください
約束より少し前に待ち合わせ場所に行くと、すでに蓮が待っていた。
背の高い蓮は、人混みの中でもすぐに見つけられる。
私に気づいた蓮が、こっちこっちと手招きする。
夜の公園で会ったときのラフな感じとは違って、少しきれいめの格好。初めて見るジャケット姿は、いつもよりなんだか大人っぽく見えて、ついドキドキしてしまう。
そんなことを言えるはずもなく頬を火照らせる私とは逆に、いつもと全然変わらない涼しげな表情の蓮。
「今日の七瀬、なんか雰囲気違うね」
「……いいよ、似合わないって言って」
「そんなことないって。可愛いよ」
そんな恥ずかしい台詞を平然と君は言うから、余計に胸の高鳴りは収まりがつかなくなる。
「ほ、他の二人は?」
あたりを見回してみるけれど、それらしき姿はどこにも見当たらない。
「え、俺らだけだけど?」
「……へ?」
冗談か何かかと思った。びっくりさせておいて、実はもうどこかにいる、とか。
でも、待っていても否定の言葉はなさそうで。