たったひとつの恋をください




「な、なんで。琴里は?太一は?いないの?」


「ああ、あいつら二人ともホラー系ダメだから」


そう答えた蓮の顔が、ほんの一瞬、曇った気がした。


もしかして、琴里とケンカでもしたのかな?


それで私に相談したかったとか……?


でも、いつだって仲良しの二人がケンカするところなんて、いまいち想像できない。


きっと、私にはわからない何かがあるんだ。


あれこれ考えてみたってわからないから、今は私からは訊かないことにした。


話があるなら、そのうち蓮から話すだろうし。


「ほら、行くぞ」


「う、うん」


こんなのずるいかもしれないけれどーー


思いがけず手にした君との時間を、手放したくなかったから。



少し早めに歩く蓮に、慌ててついていく。


胸の鼓動は、早くなる一方だった。




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