たったひとつの恋をください
映画は三時間と随分長かったけれど、退屈することなんてなくて、エンディングが終わるまで、ずっと言葉もなくスクリーンを見つめて余韻に浸っていた。
「はあ、面白かったあー」
音楽が止んで明かりがついた瞬間、気が抜けたのか。
グルル~っ、とお腹の虫が盛大になった。
「…………っ」
そう言えば、朝起きてから、ポップコーン以外まともに食べてなかったんだっけ。
慌ててお腹を押さえるけれど、もう遅い。
蓮が笑いを堪えながら、
「ここにもモンスターがいた」
なんて言うから、恥ずかしさは最高潮にまで募る。
何か言い訳しようと口を開いたけど、何を言っても墓穴を掘るだけな気がして、そのまま口を閉じる。
やっと笑いが収まったらしい蓮が(まだちょっと口元に残ってるけど)、手を伸ばして言った。
「なんか食いに行くか」
「……うん」
躊躇ったけれど、その手を拒むことなんて、もうできなくて。
映画館の人混みを抜けるまで、その手はずっと繋いだままだった。