たったひとつの恋をください




映画の感想をあれこれ言い合いながら、早めの夜ご飯を食べ終えて店を出る頃には、外はすっかり夜の空気に包まれていた。


十二月の夜の空気。キンと耳の奥で音が鳴りそうなくらい冷たくて、実際、耳たぶはかじかんで少し痛かった。


大通り沿いには最近できたばかりの大きなビルがあって、カラフルな袋を下げた人たちが忙しなく通り過ぎていく。


クリスマスプレゼントかな、となんとなく思った。大切な人への、それとも自分への。


どこからともなく耳に馴染んだクリスマスソングが流れてきて、駅前の広場には大きなツリーがシンボルみたいに立っている。キラキラ光るイルミネーションが夜に染まる街を、行き交う人の顔を、明るく照らしだす。


こんな場所にいると、なんだか本当にデートみたいだなって、錯覚しそうになってしまう。


映画館を出てから、なんだかずっと夢見心地で、体がふわふわしてて。




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