たったひとつの恋をください





そのとき、ふとーー


頬に冷たいものが落ちてきた。



「あっ、雪……」



星のない夜空から、はらはらと舞い落ちる雪。


一粒、一粒。ゆっくりと、スローモーションでも見ているみたいに。



「ねえ蓮、綺麗だね」



そう言って、振り向きかけたそのときーー、



突然、後ろから蓮が抱きついてきて。



「ーーーーっ!?」



頭が、真っ白になった。



「プレゼント、ちょうだい」



蓮の声が、耳元で聞こえる。



「な、なに」


「七瀬が、ほしい」


「……へ、変な冗談やめてよ」


「冗談じゃないよ」


腰に回された腕に、ギュッと力がこもる。


冗談じゃないなら、なんなのこれは。


なんで、いきなりこんなことーー。





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