たったひとつの恋をください
顔が見られない。だから君が何を考えてるのか、余計にわからない。
ーー夢なのかなって、一瞬思った。だけど違うことくらいわかってた。
だって、心臓がこんなに、壊れそうなほどバクバク言ってる。
これが夢なら、びっくりしてとっくに飛び起きてる。
「ずっと、思ってた。琴里とちゃんと話をしなきゃいけないって。俺たちは、このままじゃダメなんだって。この前七瀬に言ったこと、本当は自分に向けた言葉でもあったんだ」
ーー話し合わなければわからないこともある。
蓮は私にそう言った。
お互いが、変わるために。前に進むためにって。
その通りだった。話さなきゃわからないことが、たくさんあった。
だけどーー、
「今日、本当は諦めようと思ってここに来たんだ。それできっぱり、自分の気持ちにケジメをつけようって」
ーーでも、できなかった。
「バカだよな。そんなんで諦めついてたら、とっくに諦めてるのに」