たったひとつの恋をください




顔が見られない。だから君が何を考えてるのか、余計にわからない。



ーー夢なのかなって、一瞬思った。だけど違うことくらいわかってた。



だって、心臓がこんなに、壊れそうなほどバクバク言ってる。


これが夢なら、びっくりしてとっくに飛び起きてる。


「ずっと、思ってた。琴里とちゃんと話をしなきゃいけないって。俺たちは、このままじゃダメなんだって。この前七瀬に言ったこと、本当は自分に向けた言葉でもあったんだ」


ーー話し合わなければわからないこともある。


蓮は私にそう言った。


お互いが、変わるために。前に進むためにって。

その通りだった。話さなきゃわからないことが、たくさんあった。


だけどーー、



「今日、本当は諦めようと思ってここに来たんだ。それできっぱり、自分の気持ちにケジメをつけようって」


ーーでも、できなかった。


「バカだよな。そんなんで諦めついてたら、とっくに諦めてるのに」




< 299 / 377 >

この作品をシェア

pagetop