たったひとつの恋をください
「ねえ、せっかくだし、校内案内しよっか?」
彼女はにっこりと微笑んで、そう言った。
「さすがに全部はムリだけど、よく使う場所くらいは知っておいたほうが、二学期から楽でしょ?」
「い、いいよ。そんな、悪いし」
全力で遠慮したかった。
だってお腹空いてるし、暑いし、なにより間が持つ気がまったくしなかったから。
だけど私の遠回しな拒否なんて、これっぽっちも伝わってない様子で。
「全然いいよー。あたしもまだ行くとこあるからさ。ねっ、行こうよ」
彼女はお構いなしに、ぐいぐい私の手を引いて歩く。