たったひとつの恋をください
ねえ、なんでそんなに苦しそうに、そんなこと言うの。
もっとわかるように言ってよ。
言いたいことはたくさんあるのに、全然声にならない。
そこに立っているのが、やっとで。
「七瀬が好きだ」
蓮の声が、透き通るようにまっすぐに響いた。まわりの他の音が、一切聞こえなくなった。
ーーー好き。好きだよ。好きだから。
それは夢の中で、何度も君が言った言葉。
私が何度も、君に言った言葉。
夢だったから、私は何も考えずに君の胸に飛び込めた。
でも、今は違う。
私たちが立っているこの場所は、夢なんかじゃなくてーー
紛れもない現実だったから。