たったひとつの恋をください
しんと冷えきった、人のいない朝の校舎。
日曜日はほとんどの部活動が休みで、窓から見える木枯らしの吹く校庭はなんだか淋しく見える。
静かだった。とても。自分の足音と心臓の音だけが、煩いくらいに廊下に響いていた。
夏休みとは全然違う。湿気も熱もない、運動部の声も吹奏楽の音もない、ずっと先まで凍えるような冷たい空気。
私の足は、通い慣れた教室に向かっていた。だけど足取りは重く、全然進んでいる気がしなかった。
ーーこの先に、私を待っている人がいる。
どんな気持ちで待ってるんだろう。
どんな顔で私を迎えるんだろう。
私はいったい、どんな顔で会えばいいんだろう。