たったひとつの恋をください
教室は、もう目と鼻の先だった。
見慣れた二年五組のプレートが、早く来いと手招きするように私を見下ろしている。
「…………」
足が、止まった。行かなくちゃってわかってるのに、体が言うことを聞いてくれない。
いっそ逃げ出したかった。辛い現実しか待っていないなら、わざわざそこに足を踏み入れることなんてしたくなかった。
だけどーー
だけど私にそんなことできるはずがないってことも、よくわかってる。
大切な人だから。だからこそ、辛くても向き合わなくちゃ。