たったひとつの恋をください
ーーねえ蓮、危ないよ。
ーー平気だって。
それまでコンロなんて触ったこともなかった蓮は、いきなりガスを全開にしてしまった。
慌てた拍子にフライパンが床に落ちて、火はそばに置いてあったキッチンペーパーに燃え移った。
一瞬の出来事だった。火が勢いよく燃え盛り、その場はむせるような熱に包まれた。
ーー危ないっ!
燃え上がった炎は、とっさに蓮を庇った琴里にまで襲いかかった。
焦げ臭い匂い、充満する煙、悲鳴をあげて転げ回る琴里。
ーー琴里っ!?
何が起こったのかわからなかった。
どうすればいいのか。
けれど考えている暇なんてなかった。蓮は慌てて水をかけて火を消し、琴里の服を剥ぎ取った。
琴里の背中は信じられないほど腫れ上がり、血で真っ赤になっていた。
痛い痛いと泣きじゃくる琴里を抱えたまま、蓮はどうすればいいのか必死に頭を回転させた。
親はいない。自分でなんとかしなくては。
救急車を呼ばなきゃ、と思ったけれど、混乱してその番号が思い出せない。