たったひとつの恋をください
何もできず、もどかし思いで立ち往生していると、玄関のドアが勢いよく開いた。
ーー何してるのっ!?
外からでもただ事ではないことがわかったのだろう、琴里のお母さんが血相変えて走って来て、棚にあった消化器で火を消した。
そのあと、すぐに到着した救急車で、琴里は病院に運ばれた。
すぐに処置をしたけれど、琴里の背中には大きな火傷の痕が残った。
でも、傷が残ったのは、体だけじゃなかった。琴里は心にも、深い傷を負ってしまった。
退院しても、ほとんど家から出なくなり、学校も休みがちになった。
情緒不安定な時期が続き、薬に頼らざるを得なくなった。
急に怒り出したり、泣き出したり、テレビで火が燃えるのを見ただけで叫び出したりすることも度々あった。