たったひとつの恋をください




そんなある日ーー事故から一年が経った頃のことだった。


琴里が突然、蓮に声をかけてきた。


学校の帰り道。夕焼けの中で、琴里はにっこりと微笑んで言った。



『ねえ蓮、あたしたち付き合わない?そしたら、あのときのこと許してあげる』



琴里がどういうつもりでそんなことを言ったのか、蓮にはわからなかった。


自分にひどい怪我を負わせた奴と付き合うなんて、余計に辛いだけじゃないのか。


だけど、なんで、とは訊けなかった。頷くしかなかった。


それが償いになるのなら。


それで琴里の心がほんの少しでも救われるなら。




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