たったひとつの恋をください




最初は疑問だったけれど、そのうちに、その選択は間違いではなかったと思うようになった。


付き合い始めてから、琴里の精神状態は、少しずつではあるけれど、確実によくなっていったから。


そのうちに薬に頼ることもなくなり、一度はトラウマになってしまった料理も、人並みにできるようになった。


これでいいんだと、思っていた。



『あたしたち、これからもずっと一緒だよね』



琴里はよくそんな言葉を口にした。



ーーずっと、いつまでも、大人になっても、一緒にいようね。



蓮の気持ちも同じだった。琴里のためならなんだってするつもりだった。ずっとそれは変わらない、そう思っていた。


端から見れば、二人は仲のいい、ごく自然なカップルだった。


幼い頃から公認の仲だったし、むしろ今までも付き合ってたようなもんじゃん、と友達に笑われたりもした。




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