たったひとつの恋をください
「蓮がナナちゃんに惹かれてるのは、随分前からわかってたの」
琴里は長い髪をサラリと後ろに掻き上げながら言った。
「蓮はきっとこういう子が好きなんだろうなって。ずっと小さい頃から一緒だったから、わかっちゃうんだ」
懐かしい思い出話をするみたいに、目を細めて。
「それとね、ナナちゃんの気持ちも、結構前から気づいてたよ。ナナちゃん、わかりやすいから。知ってて太一くんと無理やりくっつけようとしたの。あたし、ひどい奴でしょ?」
私は何も言えずに、首をブンブンと横に振る。
ひどい、なんて、言えるはずない。
ひどいのは、むしろ私のほうだ。
ーー蓮と両想いになりたい。
一度でも、そう願ってしまったんだから。