たったひとつの恋をください




「蓮がナナちゃんに惹かれてるのは、随分前からわかってたの」


琴里は長い髪をサラリと後ろに掻き上げながら言った。


「蓮はきっとこういう子が好きなんだろうなって。ずっと小さい頃から一緒だったから、わかっちゃうんだ」


懐かしい思い出話をするみたいに、目を細めて。


「それとね、ナナちゃんの気持ちも、結構前から気づいてたよ。ナナちゃん、わかりやすいから。知ってて太一くんと無理やりくっつけようとしたの。あたし、ひどい奴でしょ?」


私は何も言えずに、首をブンブンと横に振る。


ひどい、なんて、言えるはずない。


ひどいのは、むしろ私のほうだ。



ーー蓮と両想いになりたい。



一度でも、そう願ってしまったんだから。



< 315 / 377 >

この作品をシェア

pagetop