たったひとつの恋をください
なんなんだと思った。今は誰とも話したくなんてないのに。いったい何の用があるっていうの。
重たい頭を持ち上げて、ケータイの画面に目を向けた。
「えっーー?」
電話は、蓮からだった。
慌ててケータイを手に取ったものの、通話ボタンを押すことができなかった。
今は、何も話せる気がしなくて。
だけど、電話は鳴り続けた。
何十秒も、何十回も、しぶとく鳴り続けた。
そして。
「ーーはい」
とうとう通話ボタンを押した私は、短く言った。
電話の向こうで蓮が小さく何かを言うのが聞こえたけれど、聞き取れなかった。
「……蓮?」
呼びかけるけど、返事はなくて。
嫌な予感がした。何かはわからないけど、なんだか、ものすごく。