たったひとつの恋をください





半年前の夏休みーー



『よろしくね、ナナちゃん』



一人ぼっちだった私に、最初に手を差し伸べてくれた琴里。


あの日から、私は、一人じゃなくなった。



『楽しいよ、ピクニック♪』



遠回しの拒否なんてちっとも伝わらなくて、いつだって強引に私を引っ張っていくから。


気づけば私は、完全にあの子のペースに巻き込まれていた。



『勝つでしょ、だって蓮だもん』



蓮のことが大好きで、無条件に信じてて。


なんでそんな風にまっすぐに信じられるんだろうって、ちょっと羨ましかった。



『ねっ、似合うでしょ?』



自分に自信か持てなくて、いつも下ばかり向いていた私の顔を、上げさせてくれた。


こんな私でも変われるんだって、教えてくれた。



『私たち、もう友達だよね!』



初めて、友達の意味を知った。


いつだって元気で、たくましくて、たくさんの笑顔をくれた女の子。



だけどーー



『ナナちゃんの気持ち、結構前から気づいてたんだよ』



だけど全部、知ってたんだね。


必死にごまかしたおまじないも、わざとらしい作り笑いも嘘も、隠した気持ちも。


きっと、何もかも全部、お見通しだったんだね。




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