たったひとつの恋をください
「とりあえず校内はこれくらいかな。次は外ね」
「えっ、まだあるの?」
つい本音がポロッと零れてしまった。
「もうちょっとだよー。疲れちゃった?」
返事の代わりに、諦めて首をゆるく横に振る。
むしろ、なんでこの子は疲れないんだろう。
そもそも、私の案内役なんて買って出て、いったいこの子に何の得があるのかな。
さっき行くとこあるとか言ってたよね。
私なんかほっといてさっさと行けばいいのにーー。
心の中では、いくらだって文句を言えるけれど。それをいちいち口に出すことはしない。
クラスメイトとの関係を不必要にこじらせるなんて、あとあと面倒なだけだから。
下駄箱を通りすぎて、外へと続く渡り廊下に出る。風が通るぶん、熱気のこもった廊下よりずっと涼しく感じる。
中庭を突っ切って行くと、突き当たりには体育館があった。