たったひとつの恋をください
ガラリと扉を開けた。おそるおそる目を開ける。
真っ白な病室。そこにいたのは、ベッドの前に座る蓮とーー
「琴里……」
その痛ましい姿に、言葉を失った。
頭や首や腕には包帯が巻かれ、白くてほっそりした頬が怪我で腫れ上がっている。
扉の前で立ち尽くしていると。
「ナナちゃん、来てくれたんだ。ありがとう」
琴里が体をこちらに向けて、微笑んで言った。
でも、少しも笑ってなんかいなかった。
いつもの屈託のない笑顔とは全然違う。
口元だけに笑みを浮かべて、でも、その目に光は映っていなかった。
「でも、ごめんね。今は顔見たくないの」