たったひとつの恋をください

だけど、呼ばれて近づいてきたのは、あの蓮とは別人だった。


「よっ、琴里ちゃん。蓮は今コーチと話し中だからちょい待っててね」


黒髪短髪の、首にタオルを巻いた爽やかな男の子だ。いかにもスポーツ少年って感じの。


「そっか。太一くんありがとー」


二人の会話に、あれ？と私は首を傾げる。


太一？この人が蓮じゃないの？


そのとき、目の前の彼が、おっ、と声をあげた。


「蓮、話終わったみたいだよ」


太一の肩越しに、その姿が見えた。


ーー瞬間。


視界が目の前のその一点に集中して、他は何も見えなくなった。


「うそ……」


こちらに向かってくる、背の高い男の子。白い生地に赤のラインが入ったユニフォーム。


少し長い髪を後ろに流してて、格好だって、この前とは全然違うけれど。


どくん、と心臓が大きく鳴った。



ーーなんで。


なんで、あいつがここにいるの。


今、一番会いたくなかったあいつが、なんで。