たったひとつの恋をください
「……おい。七瀬」
蓮が私の手を掴んで引き止める。
もう一度、蓮の目を見た。今はもう、そこに迷いはない。
ああ、わかっちゃったかな。言わないつもりだったのに。
「ねえ、蓮。今まで、ありがとう」
私の弱さを受け止めてくれて。
心の声を聞きつけてくれて。
好きだと言ってくれて、ありがとう。
一人じゃないって言ってくれて、ありがとう。
あの言葉、本当に嬉しかった。
ずっと忘れないよ。
その言葉だけで、もう充分だよ。
だから、決めたんだ。
私の想いが、これ以上、大切な人を傷つけてしまわないために。
「おい。何言ってーー」
掴まれた腕を、するりと解いて。
「じゃあね。ばいばい」
その言葉を口にした瞬間、目の奥がつんと痛くなった。
笑ったつもりだったけど、ちゃんとできてたかな。