たったひとつの恋をください
「七瀬、お待たせー。ごめんね、先生話長くってー」
教室の外で、友達の呼ぶ声。
私ははっとして、慌てて黒板消しでゴシゴシと目の前の文字を消した。
「ん?そんなとこで何してんの?」
ドアからひょっこり顔を覗かせて、友達が首を傾げる。
「あっ、今日、日直だったから!ちょっとこの辺消し跡が残ってて、気になって……っ」
「あはは、真面目だねえ七瀬は」
とっさの言い訳は我ながらひどいものだったけど、笑ってもらえたからよしとする。
「んじゃ、帰ろっか」
「うん、そうだね」
ふう、とそっと息をつく。
ちゃんと消したのをもう一度確認してから、誰もいない教室を後にした。