たったひとつの恋をください
第二章 「憂鬱な夏休み」
運命だって、彼は言った。
もちろんそんな言葉を間に受けたわけじゃない。
けどーーこんな偶然って、ある?
二度と会いたくないと思ってた人とすぐに再会して、しかも同じクラスとか……。
夢だと思いたい。もしくは冗談とか。
だけど私の煩い心臓が、これは現実なんだっていう一番の答え。
驚きとか、動揺とか、色んな感情が混ざって、どんな反応をしたらいいのか、まるでわからなかった。
「あれ?どしたの、ナナちゃん。固まっちゃって」
不思議そうな琴里の声に、はっと我に返る。
「な、なんでもないよ」
気に食わないのは、蓮の澄ました態度だ。
一瞬だけ、私を見て目を見開いたけれど、でもそれは本当に一瞬のことで。
「初めまして、塩屋さん。よろしくね」
次の瞬間にはもう、まったくの初対面みたいににっこり笑って、そう言った。
……初めまして、だって?
一発ぶん殴ってやりたかったけど、転校早々、修羅場なんて御免だ。
やり場のない怒りをぐっと堪えて、
「……よろしく」
と一言、ぶっきらぼうに返した。