たったひとつの恋をください
次の日も、同じ時間に登校して、同じ時間にテストを終えた。
教室に琴里はいなかった。理数系が苦手だって言ってたから、追試は昨日で終わったんだろう。
よかった、と少しホッとする。
さすがに彼女のいる前で服を返すのは気まずいし。
外に出ると、相変わらず焼けるような暑さ。
こんな中、汗だくになりながら走り回る運動部はすごいなあ、なんて感心しつつ、私は目当ての場所へと足を向ける。
少しだけ、緊張する。けど、逃げたらせっかくの決意が台なしだ。これを返したらもう関わらないって、決めたんだから。
体育館の二つの扉は、昨日と同じに開け放されていた。
でも、昨日のように威勢のいい掛け声は聞こえてこない。
聴こえるのは、床を打ちつけるボールの音と、キュッキュッと小刻みに動くジューズの音。
休憩中なのかな。
私はそっと中を覗き込んでみて、思わず目を見張った。
そこにいたのは、須藤蓮、ただ一人だった。