たったひとつの恋をください


「わ……っ」


漫画でしか見たことがないような、鮮やかなダンクシュート。


すごいな、って素直に思った。


公園で会ったときのヘラヘラした顔とも、昨日の澄ました作り笑顔とも全然違う、真剣な横顔。


その首を伝う汗までもが、キラキラと眩しく光っていた。


ついさっきまで確かにあった苛立ちすら忘れて、私はじっと見入ってしまっていた。


首にかけたタオルで汗を拭う蓮が、ふいにこっちを向いて、視線が交わる。


それでようやく、我に返った。


公園のときと同じパターンだと気づいたときには、もう遅かった。これじゃあ覗きの常習犯だって思われても文句は言えない。


蓮が手で髪を掻きあげながら、にっこりと笑って片手を挙げた。


だけど私は恥ずかしさで、口をパクパクと動かすだけ。


ーー今日は部活休みなの?


ーーパーカー返しに来たんだけど。


言葉はいくらだって思いつくのに、実際に声になって出てくるのは、あ、とか、えっと、とか情けない声だけで。ちっとも思うように動いてくれない。



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