たったひとつの恋をください




蓮がゆっくりと私のほうへと歩いてくる。


そして、私の目の前に立った。


「また会ったね。七瀬ちゃん」


ムカつくくらい余裕の笑みで。ついさっき、ちょっとでもカッコいいなんて思ってしまった自分を全力で罵りたくなる。


「短期間でこんなに何度も会うなんて、やっぱり運命だったりして」


「…………っ!」


やっぱり、全部覚えてるんじゃん。


なのに彼女の前では、平然と「初めまして」なんて言って。


運命なんて、これっぽっちも感じてないくせに。


「あなた、サイテーだね。昨日と全然態度違う。誰にでもそういうこと言ってるわけ?」


キッとできる限り強く睨みつけて言うけれど。


「そう。俺、サイテーなんだよね」


その飄々とした態度が余計に悔しくて、もう、言わずにはいられなかった。



「……どうして、キスなんてしたの?」



あんなに可愛い彼女がいるのに。


よそ見なんてしてないで、あの子だけ見てればいいのに。




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