たったひとつの恋をください
「なんでって、可愛いと思ったから、かな?」
「…………」
返ってきたのは、あまりにも想像通りの言葉で。怒りを通り越して、笑いだしたくなった。
可愛いとか、運命とか。
そんな適当な言葉で片付けてしまえるくらい、どうでもいいことだったんだ。こいつにとっては。
だけど私は違う。初めてだった。初めては好きな人としたかった。
そんなことをいつまでも引きずっている自分は、バカみたいだって思う。
恋愛なんて興味ない、私には縁がない、普段そう思ってるくせに、本当はそんなことに夢見てるなんて。
だけど、私だってーー
じわりと目の奥が熱くなる。鼻がツンとして、ふ、と口元が緩む。
ああ、もう、ダメ。泣きそう。ここで泣いたら、本物のバカじゃん、私。
目を伏せて、手に持った紙袋の存在を思い出した。
そうだ。今日はこれを返しに来たんだっけ。
顔を伏せたまま、グイッ、と紙袋を蓮の胸に突きつける。
「これ、どうも。ちゃんと洗濯しましたから。あと、この前のことはもう忘れますから。もう二度と、あんなふざけたマネはしないでください」
これ以上近づかないで。関わってこないで。
もう、勝手に人の心に入り込んでこないで。
「あ、ちょっと」
声が背中越しに聞こえたけれど、私は振り返らずに、その場を走り去った。