たったひとつの恋をください




テストさえ終われば、あとはもう二学期まで学校に行かなくていい。


本当なら、そのはずだったのに。


神様は、そう簡単には私に楽をさせてくれなかった。



「つ、ついし……ですか?」



テスト返却のために学校に出向いた私は、職員室でテストを受け取って、ぽかんと聞き返した。


「ああ、追試だ」と、藤本先生が苦々しく頷く。


「数学と物理と英語の三教科だ。ケアレスミスが目立ったな。病み上がりで調子出なかったのか?」


違う、と思った。風邪は治っていたし、調子は別に悪くなかった。


ただ暑くて、全然集中できなくて、時間もギリギリで。


だけどそんな理由で赤点を取ったことなんて、今までなかったのに。


平均点くらいは余裕だって、そう思ってたのに。




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